知ればもっと好きになる-万年筆編-

知ればもっと好きになる-万年筆編-

はじめに

万年筆は「文字を書くための道具」として知られていますが、その本体には驚くほど多くの工夫や歴史が隠されています。ペン先の素材やキャップの仕組み、吸入方式やボディの素材など、ひとつひとつに理由とストーリーがあります。この記事では、万年筆をより深く楽しむための雑学をまとめてご紹介します。


ペン先に隠された秘密

万年筆の象徴ともいえるペン先には、金(14Kや18K)がよく使われています。これは柔らかさと弾力性があることで、なめらかな書き味を実現できるためです。また金は腐食に強く、インクによる劣化を防げるという利点もあります。

さらに、ペン先には「EF」「F」「M」など字幅を示す刻印や、ブランドのロゴ、製造国を表す記号が刻まれていることがあります。小さな刻印を見るだけでも、その万年筆の個性や背景を知ることができるのです。


キャップの役割と種類

万年筆に欠かせないのがキャップです。キャップの最大の役割は「インクの乾燥を防ぐこと」。実はキャップ内部には気密性を高めるための精密なパーツが仕込まれており、空気の流入を最小限に抑える工夫がされています。

キャップの種類にも違いがあります。ねじ込み式は気密性が高く長期保管に向いています。はめ込み式は取り外しがスムーズで、日常的に使いやすいタイプ。そしてユニークなのが「キャップレス」。その名の通りキャップがなく、ノック式や回転機構でペン先を出す仕組みです。外出先でも素早く書き出せるため、ビジネスシーンで人気があります。

また、プラチナ万年筆は独自技術「スリップシール機構」もあり、約1年間インクを乾燥させないとされる画期的な構造などもあります。


吸入方式の雑学

インクをどう取り込むかも、万年筆の楽しみのひとつです。最も一般的なのは「カートリッジ式」と「コンバーター式」。カートリッジ式はインクの交換が簡単で初心者向け、コンバーター式は好きなボトルインクを使える自由度があります。

さらに愛好家に人気なのが「ピストン吸入式」。ボディ内部にインクを大量に取り込めるため、長時間の筆記に向いています。中には「スポイト式」や「真空吸入式」など、独自の仕組みを持つモデルもあり、構造を知ることで選ぶ楽しみが広がります。


ボディ素材の奥深い世界

万年筆の本体素材には、樹脂・金属・エボナイトなどさまざまな種類があります。樹脂製は軽くて扱いやすく、カラーバリエーションも豊富。金属製は重厚感があり、安定した書き心地を好む人に向いています。古くからあるエボナイト(硬化ゴム)は、しっとりと手になじむ独特の質感で愛好家から高い支持を集めています。

素材の違いは単なる見た目だけでなく、「手に持ったときの温もり」や「重心の取りやすさ」にも影響します。同じブランドでも素材が異なるだけで、書き味が大きく変わるのは万年筆ならではの面白さです。


デザインに込められた工夫

万年筆の外観にも実は多くの工夫が隠されています。特に軸の素材や模様は、持つ人の個性を表す重要なポイントです。マーブル模様のレジン軸はひとつとして同じ柄がなく、所有する喜びを高めてくれます。また木軸タイプでは天然木の木目が一本ごとに異なり、年月を重ねることで色合いや質感が変化していく楽しみも味わえます。

こうした素材や模様のデザインは、見た目の美しさだけでなく「持つたびに気分が上がる」という感覚的な価値にも直結します。同じ書き心地でも、見た目が自分好みの一本であれば、万年筆を使う時間が特別なものになるのです。

また、ボディの重心バランスも重要です。書きやすさは重心の位置によって左右され、キャップを後ろに挿すかどうかでも変化します。設計段階で緻密に計算されている点も、万年筆が「ただの筆記具」ではないことを物語っています。


まとめ

万年筆は単なる文具ではなく、ペン先の素材やキャップの仕組み、吸入方式、ボディ素材やデザインに至るまで、数多くの工夫と歴史が詰まった奥深いアイテムです。雑学を知ることで、普段何気なく使っている万年筆がもっと愛おしく感じられるはずです。

2026年の新しい手帳や日常の筆記に合わせて、ぜひお気に入りの一本を見つけてみてください。

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